【ブログ】板橋で絵本と出会う夏②――いたばしボローニャ絵本館の「世界の絵本展」へ

【ブログ】板橋で絵本と出会う夏②――いたばしボローニャ絵本館の「世界の絵本展」へ

こんにちは、絵本制作室の三島です。
先日、
板橋区立中央図書館に併設されている「いたばしボローニャ絵本館」で開催中の「世界の絵本展」を観に行ってきました。

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板橋区立中央図書館に併設されている「いたばしボローニャ絵本館」は、イタリア・ボローニャから寄贈された絵本を中心に、世界約100の国と地域の資料(その数は3万冊以上)を収蔵している図書館だ。

会場には、ボローニャ国際絵本原画展ラガツィ賞を受賞した作品や、現地ボローニャから寄贈された絵本が展示されている。ちなみに、ボローニャ・ラガツィ賞は権威ある国際的な賞で、作家やイラストレーターはもちろん、編集者や装丁者などを含めた総合的な作品として、本そのものに贈られる賞である。

世界各国から集まった絵本の表現の多様さ、斬新さと奥深さにワクワクが止まらない。今回は、その中でも特に気になったラガツィ賞受賞作を2冊、そして、その他に気になった2冊を紹介したい。

①『熱波』(Heatwave)

作: Lauren Redniss
出版社: Random House Children’s Books
国: アメリカ

『熱波』(Heatwave)。そのタイトルどおり、ここ数年の酷暑は、日本だけでなく世界中の問題なのだと、改めて実感する作品。

紙面いっぱいに広がる赤。――あつい。ページをめくるだけで汗ばんでくる。世界がこんなふうに真っ赤に見えて、気を失いそうになる瞬間、実際にある。暑さの感覚をここまで視覚で表現できるのか、と胸を打たれた。

やがて雨粒がぽつりぽつりと落ちてきて……真っ赤な紙面に恵みの青が差してくる表現も秀逸だ。息苦しかった読者に、生気を取り戻させてくれる涼し気な“青”。最後は、ほっとできる締めくくりで安堵した。

一日の仕事を終えたあとに、帰る場所があるありがたさを感じる。そんな絵本だ。

②『Gutenachtgeschichten für Celeste - Ein sehr gruseliges Bilderbuch』(セレステへのおやすみのおはなし ― とてもこわい絵本)

作: Nikolaus Heidelbach and Ole Könnecke
出版社: Carl Hanser Verlag
国: ドイツ

この絵本は、まったく異なるタイプの2人の作家によるコラボ作品。一方は漫画のようなコミカルなタッチで、もう一方は精緻で不気味な雰囲気が漂うイラストレーションを描く。対照的なタッチが響き合い、ひとつのすてきな物語を紡ぎ出している

両親が外出している夜、妹が兄に「怖いお話をして」とせがむ。兄妹のやりとりの部分はコミカルに、お話の世界の部分は精緻で不気味なイラストで展開されていく。

ストーリー進行はというと、兄が必死に怖がらせようとしても、妹はまったく動じない……そしてラストは意外な展開に……。

子どもは、怖い話が大好きだ。あと、肝試しも。
今年の夏、実家で娘たちと姪っ子で「自作の肝試し」をしたことを思い出した。泣く子が出ても、また翌日もやりたがる。「安心な場所で怖がれる」体験は、本の中も実家の肝試しも一緒だ。

③その他気になった本

ラガツィ賞受賞作品のほかにも、ボローニャから寄贈されたという絵本たちも展示されていた。これらも、本当に秀作ぞろいで絵本の表現の多様さ・奥深さを存分に感じさせてもらった。

■『Zamanın Aktığı Yer, Zamanın Durduğu Yer』(時間の流れる場所、時間の止まる場所)

作:Eylül Senyurek Altas
絵:Sevval Senturk
出版社:Nobel Cocuk
国:トルコ

タイトルをAI翻訳にかけると「時間の流れる場所、時間の止まる場所」という意味になる。

この絵本は、両端から読み進めていき、本の中央で出会うという構成になっている。紙面に展開されるイラストはファンタジックで、タイトルの響きは詩的で哲学的。“時間”というテーマが、テキストとイラストレーションの中でどのように表現されているのか。翻訳されたストーリーを読んでみたいと感じさせられた作品だ。

■『قناع الغريب』(よそ者の仮面)

作:Aisha Al Harthy
絵:Baraa Alawoor
出版社:Yanbow Al Kitab
国:モロッコ

タイトルをAI翻訳にかけると「よそ者の仮面」という意味になる。

ぜひ、このリンクをクリックして表紙を見てほしい。この不気味な仮面の男!! この表紙の、この男と目が合ってしまい、吸い込まれるようにページを開いたのだ。


あらすじの掲載されたWebサイトを探したところ、このように書かれている。

仮面をつけた訪問者がある村にやって来る。彼はそこに小さな灰色の家を建て、屋根に望遠鏡を据えつけ、村について知るためにたくさんの本を集める。
その訪問者は親切で、助けになり、よく気がつく人物であったため、村人たちにすぐに慕われるようになる。子どもたちの遊びに加わり、大人たちと話し、働く人々に助言を与える――やがて村人全員が彼を受け入れ、隠しごとはひとつもないほどに溶け込んでいった。
だが、彼の正体は何者なのか? なぜ仮面をつけているのか? 何を隠しているのか?
https://etisalataward.ae/edition-details/1190  の一部をAI翻訳)

こ、こわい……。深層心理をえぐり出すサスペンス映画のようだ。本当に子ども向けの本なのだろうか。こちらも、どんな結末になっているのか、ぜひ日本語のテキストを読んでみたい。

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「世界の絵本展」は、世界の絵本の多様さと奥深さを改めて実感できる貴重な機会。8月31日までの開催とのことなので、ぜひ足を運んでみていただきたい。

■ いたばしボローニャ絵本館HP

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/library/bologna/fair/2000287/2000900.html