こんにちは。絵本制作室の三島です。
先日、経堂のRungtaさんにて、OKKO YOKKOさんのトークイベント「Persian Night~イランの今と本の秘話~」にお邪魔してきました。ご自身の著書『イランの手編み靴下』(OKKO YOKKO、サキネ・シャバニ 共著/風糸ブックス 発行)の出版を記念したトークイベントです。

『イランの手編み靴下』
(OKKO YOKKO、サキネ・シャバニ 共著/風糸ブックス 発行)
OKKO YOKKOさんとの出会い
OKKO YOKKOさんとの出会いは、ペルシャ語翻訳者の愛甲恵子さんを通じてでした。愛甲さんは、弊社がイランの絵本を出版した際、翻訳を担当してくださった方です。
OKKO YOKKOさんと愛甲さんは、毎年、原宿の絵本カフェ「シーモアグラス」で「イランの絵本と靴下展」という展示をされていて、私たちが絵本『ボクサー』を出版したときには、一緒に展示をさせていただいたことがご縁のはじまりでした。そのときにはじめてイランの手編み靴下を目にして、「イランにこんなにかわいい靴下があるんだ!」と胸が高鳴ったこと、いまでもよく覚えています。

一緒に展示をさせていただいたときのDM
ペルシアンBOXを囲んで
イベントのスタートは腹ごしらえから(笑)。
竹花いち子さんが思考を重ねて作ってくださった「ペルシアンBOX」をいただきながら、“手編み靴下の旅”がはじまりました。
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竹花いち子さんのペルシアンBOX
スクリーンには写真が映し出され、OKKO YOKKOさんからイランの食文化について紹介がありました。特に印象的だったのが、イランで“おこげ”はごちそうの1つだということ。日本でいう“おこげ”とは全く違う、黄金色の“おこげ”が、スクリーンに映し出されていました。なるほど、「ごちそう」とよばれるのにふさわしいたたずまいです。
また竹花さんが、OKKO YOKKOさんの口頭での説明だけを頼りに作ったというイランの乳製品「サルシール」。「そんなことって可能なの?」と驚きながら、とてもおいしくいただきました。
“食”というのは世界共通の楽しみ。新しい味に触れながら、お腹は満たされ、気持ちはイランにどんどん近づいていくのを感じました。
天に導かれた靴下の旅
OKKO YOKKOさんの旅は、イランの靴下との衝撃的な出会いからはじまります。ある年のお正月にOKKO YOKKOさんが見た夢をきっかけとして、まるで何かに導かれているかのような出会いが次々と重なっていったそう。そしてその数々の出会いの先にいたのが、今回の『イランの手編み靴下』の共著者、サキネ・シャバニさんだったのです。なんという運命なんでしょう。OKKO YOKKOさんが、いったいどんな奇跡に導かれていったのか、気になりませんか?……ぜひ著書『イランの手編み靴下』で、ページをめくって確かめてみてください。
「あまりに偶然が重なりすぎて、天に導かれていたのかも……」と笑顔で話されるOKKO YOKKOさんが印象的でした。
著書『イランの手編み靴下』の魅力
『イランの手編み靴下』はOKKO YOKKOさんと、先ほど登場したサキネ・シャバニさんとの共著です。OKKO YOKKOさんの靴下との出会いから、現地(イランのマースーレ村)の編み手のおばあちゃんたちとのふれあいのストーリーと、サキネさんの研究者としての深い視点が合わさって、ほんとうに見ごたえのある、唯一無二の一冊となっています。紙面には、思わず見入ってしまうこまやかで色とりどりの手編み靴下の写真が並びます。でもそれだけではなく、靴下の向こう側にある、村の営みや歴史について学術的な視点で描かれていることが、この本の魅力になっていると感じます。
たとえば、私が好きなページの1つは靴下にまつわることわざがたくさん紹介されているところです。「こんなにあるなんて!」いかに靴下が身近な存在であるかということ、そして愛情が伝わってきます。
そしてそのほかにも、OKKO YOKKOさんがこれまで50名以上(!)のクリエイターの方々とともに作られてきた「白い靴下プロジェクト」から生まれた創造性あふれる靴下作品の数々、風糸ブックスさんによるイランの靴下分析と編み図まで(!)。魅力たっぷりの一冊です。
私も家族も、OKKO YOKKOさんから手編み靴下を何足かお迎えしています。編み模様には意味があると聞いていたので、「自分の靴下の模様にはどんな意味が込められているのだろう」と、ずっと気になっていました。この本を通じて、手編み靴下を構成する要素や編み模様の意味を知ることができて、とてもうれしいです。
靴下をはいた娘たちと私
本書に、模様は「『自然』『植物』『動物』『身のまわりの事物』に大別できる」とあります。自分の靴下と見比べながら、「この模様はこれかな?」などと探す楽しみができたのと同時に、ここに編み込まれている模様は、この地に住む人たちにとって、きっとかけがえのないものなのだろうと想いを馳せることもできます。
最後に、OKKO YOKKOさんからの「ニュースからは伝わってこない、イランのこのような豊かな文化や素敵な人たちのことを、身近な人に話してほしい」というメッセージに、とても感銘を受けました。
イランという国は、ネガティブな話題でニュースに挙がることが、残念ながらとても多く、そこにはたいてい「怖い顔をした人」が映っています。でも、今回のイベントでOKKO YOKKOさんが語った人たち、そして見せてくれた写真に写る人たちは、とても穏やかで優しさがにじみ出ています。ニュースでは知ることのできない、人と人とのつながりや人を想うあたたかさ、そしてそこには語り継がれる豊かな文化があると感じられた貴重な時間でした。
靴下をなでながら、本を目で追いながら、遠くに思えていたイランのマースーレ村がなんだかぐっと身近に感じて、足元から心までぽかぽかとあたたかくなるのでした。
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