こんにちは、絵本制作室の三島です。
少し前になりますが、長野県岡谷市にあるイルフ童画館へ「かがくいひろしの世界展」を見に行きました。
■かがくいさんの絵本との出会い
かがくいひろしさんといえば、子育て世代ならほとんどの人が知っているであろう超有名な絵本作家。かがくいさんの「だるまさん」シリーズは、子どものお友だちの家に行くと、必ずといっていいほど本棚に置かれています。
我が家ももちろん例外ではありません。
我が家の場合は、私の母がだるまさんシリーズ「が・の・と」のセットをプレゼントしてくれたことで、はじめてだるまさんの絵本に出会いました。
だいぶ年季が入ってしまった
だるまさんシリーズ「が・の・と」(3冊ケース入り)
子どもたちは「だるまさんシリーズ」が大好きでした。
今振り返ってみると、絵本の醍醐味である「ページをめくる楽しさ」が目いっぱい詰まった絵本だったのではないかなと思います。「だ・る・ま・さ・ん・が~~」に続く先にあるものは? 何度めくっても、楽しく優しい表情で動くだるまさんがいる。期待を裏切ることなく、毎回ワクワク・ドキドキします。そこが幼き子どもたちの心に響いていたのではないかなと思います。
このように、子どもたちは「だるまさん」にはとってもお世話になりました。でも「だるまさん」の作者がどんな人なのか、全く知らず。この展覧会のことを知ったとき、純粋にこの絵本を生み出した人はどんな人なんだろうと、興味がわきました。
■展覧会でかがくいさんのあたたかさを知る
かがくいさんはもともと、特別支援学校の先生をされていたそうです。言葉でコミュニケーションをとることが難しい子どもたちの反応を引き出すためにはどうしたらいか、そんな子どもたちに興味を持ってもらうためにはどうしたらいいか、懸命に考えていたとのこと。かがくいさんは授業の教材として、絵や絵本を使ったり、音楽を奏でたり、人形劇をしたりしながら、子どもたちと関わっていたそうです。
そのことを知り、なんだか腑に落ちました。
「だから、幼い子どもたちをこんな素敵な笑顔にできるんだ」と。
会場の一角に、かがくいさんのあたたかさを感じられる展示がありました。それは、「わたしのしあわせ」いうタイトルで、絵本作家としてかがくいさんが感じる「しあわせ」について書かれたパネルでした。かがくいさんは、その「しあわせ」について8項目を挙げていて、私はその中の2つにとても心を動かされました。
その3 おいしそうに くちに くわえてくれること
その7 こえにださずとも、こころのなかでたのしんでくれること
まず、その3を見て胸がじーんと熱くなりました。乳児期の子どもはお気に入りのもの、なんでもなめます(笑)。我が家にも、子どものよだれでべろべろになってしまった絵本が何冊もあります。でも、それを「しあわせ」といってくれる作家さんがいるんだ、と感動しました。
そして、その7にはとても励まされました。絵本を読みきかせることを含め、子どもに何かを与えたとき、どうしてもそこから反応を期待してしまいます。子どもらしく元気に笑ってほしい、喜んでほしい、、、というように。でも、親が期待する反応でないことも多く、そんなときは「ちゃんと伝わっているのかな」と不安になったりします。かがくいさんに「外からはわからなくてもきっとその子の中で、なにか芽生えているよ」そう言ってもらえているような気がしたのでした。
■原画で見るだるまさん
原画で見るだるまさんは、とてもあたたかく優しく感じました。丸いフォルムがより一層丸くみえて、つんつんと触ってみたくなるようなかわいらしさを感じました(もちろん実際に触ったりはしませんが)。
また、今回原画を見て初めて知った作品で、私も子どももぐっと引き込まれたのが、『おふとんかけたら』(ブロンズ新社)です。
たこさん、ソフトクリームさん、トイレットペーパーさん……。それぞれにお布団をかけたらどうなるでしょう。ページをめくる楽しさ、声に出して読む楽しさが詰まった絵本です。
大人の私からしたら、もう、ソフトクリームにおふとんをかける発想に脱帽です(笑)。小さい子に向けた絵本のように思いますが、小1の娘も楽しそうに目をキラキラさせて眺めていました。
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大好きな絵本を描いた作家さんのことをより深く知り、想いに触れることができ、幸せな時間でした。イルフ童画館での展示は終わってしまいましたが、現在は岩手県花巻市で開催中とのこと。その後も、全国で巡回が予定されているようです。お近くの方はぜひ、足を運んでみてくださいね。