こんにちは、絵本制作室の三島です。
先日、9月23日は秋分の日でしたね。昼と夜がちょうど半分になる節目のとき。
春分から1年が始まるイランを描いた絵本『あと2時間で新年です~ちょうのもようのかさとイランの子どもたちのおはなし』に照らすと、ちょうど1年の折り返し地点にあたります。季節の移ろいを感じながら、半年前に行った刊行記念トークイベントの様子を振り返ってみたいと思います。
2025年4月29日、神保町のブックハウスカフェにて『あと2時間で新年です~ちょうのもようのかさとイランの子どもたちのおはなし』の刊行記念トークイベントを開催しました。
登壇者は翻訳を担当してくださった愛甲恵子さん、編集協力として携わってくださった絵本研究家の広松由希子さん、そして編集担当の三島が進行を務め、絵本に込められた物語の背景や、日本で出版するにあたっての工夫、そして制作の裏側にある思いを語りました。
物語の世界へといざなう朗読タイム
トークの始まりは、愛甲さんによる絵本の朗読から。ペルシャ語の原書の紙面をスクリーンに映し出しながら、まるごと1冊読んでもらいました。普段、文字を追いながら絵本を読むことに慣れている大人も、この時間は、絵をじっくりみて耳からお話を楽しむという贅沢な時間となりました。
絵本を生み出したふたり
の作家
続いて、この絵本を生み出した原作者のおふたりについて紹介しました。
ファルハ
ード・ハサンザーデさんについて
イランでヤングアダルト向けの物語や詩を書き続けている作家、ファルハード・ハサンザーデさん。これまでに「国際アンデルセン賞 作家賞」のファイナリストに2度も選出されている、国を代表する作家です。
ガザーレ・ビグデルーさんについて
もうひとりの作者であるガザーレ・ビグデルーさんは、2017年のブラチスラバ世界絵本原画展(BIB)にも出品経験をもつ画家。独特の空間の捉え方や不思議なうねりのある表現が魅力です。
絵本の誕生のきっかけは
この物語は、実は15年ほど前に児童雑誌の付録として書かれたお話がもとになっているそう。しかも、当初の絵本のモチーフは「蝶」ではなく「星」だったそうです。ハサンザーデさんが語ったキーワード「バタフライ・エフェクト」を意識して、画家のビグデルーさんが「蝶」を提案。そこから現在のような絵本の形になったというエピソードが語られました。
日本語版を出版するにあたって工夫したこと、大変だったこと
そして、日本語版を出版するにあたっての工夫や苦労についてもお話ししました。
縦書きへの挑戦と苦労
イランの絵本は右開きの横書きで、文字は右から左へ読み進めます。日本語版にするにあたり、絵を反転させて左開きの横書きにするのか、絵の向き変えずにテキストを縦書きにするのか、サンプルをつくって検討しました。悩んだ末、最終的には今回は読者が自然に読める「縦書き」としました。
しかし、コマの大きさがバラバラで、文字がはみ出したり、読みにくくなったり……。デザイナーも含め、何度も試行錯誤を重ねました。
タイトルについて
原題は「白い蝶のもようの傘」という意味。もっと物語の魅力が伝わるようにと、本文中の象徴的な言葉をとって、現在のタイトルになりました。この形に落ち着くまでにはかなり紆余曲折がありました。
最後に……
「ほどけない結び目はない」と物語の最後にあるように、山あり谷ありの制作期間でしたが、それでもこうして完成し、多くの方と一緒に共有できたことは本当にうれしいです。
国や文化を超えて物語はつながっていく――これからもこの絵本が多くの方々に届くことを願っています。